読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

島村卯月はなぜ制服でS(mile)ING!したのか?【デレマス24話について真面目に考える】

 アイドルマスターシンデレラガールズ24話(二期11話)の話がしたい。このアニメを最初から観ていた人なら多分ほとんどの人が同意する所だと思うけれど、この24話のラストは感動的だった。ここに至る二、三話でハラハラさせておいて最後の最後でようやく安心できる展開になっていて、一つ一つの演出も上手いから引き込まれる。この駄文を書くためにもう一度観返していたのだけれど、考察系オタクの頭で見ようとしていたのにその辺の考えが飛んでいくこと多々だった。

 それで、この24話の何が話したいかというと、表題にある通り、卯月がなぜ制服でライブに出たのだろうかということだ。実のところその部分はあんまり作中で説明されていなくて(多分そんなことをしたらテンポが悪くなるからだろう)、僕は一回観ただけだとそこのところはよくわからなかった。だからその理由、この場合はあくまで演出の意図は何かということだけれど、それについて考えてみたいと思う。

  一番簡単な説明で、真っ先に思いつくのは「ギリギリまで悩んでいたせいで、卯月が到着した時には用意する時間がなくなっていた」というものだと思うけれど、多分これはイマイチだろう。その理由ならば、演出の意図としては「来るか!?来ないか!?」みたいな感じでオタクをハラハラさせるということになるはずだけれど、むしろ二、三話に渡ってじっくり悩む卯月とそれを待つ仲間を描いていたはずだから、演出としては一貫性に欠ける(僕は映像作品の演出については少しも勉強したことがないから適当言ってるけれども。人文系特有の人間のコモンセンス頼りみたいなものかもしれない)。そもそもプロデューサーと卯月は会場に来るまでに寄り道している訳だし、到着した時こそ息を切らして来たけれども、全体的に“時間ギリギリ”感はあんまり読み取れないと思う。だからこの説明はボツ。時間の制約とかでやむを得ず、ではなくて、卯月が自分の意志で制服のまま出たという方向で考えた方が良さそうに思える。

 という訳で、話の中でその理由らしきものが読み取れないか探してみよう。まず一つは卯月がステージに出て行く直前の会話。「やっぱり変でしょうか…?」と尋ねる卯月(この時視線は明らかに自分の制服姿へ向いている)に対し、未央は「しまむーらしいよ!」と答えている。だから、ここでは“制服姿=卯月らしさ”として示されていると言っていいだろう。「らしさ」と言えば、S(mile)ING!ライブ中の演出でも出てくる。電光板に表示される(風の)“私らしさってなんだろう?―お姫様にあこがれる―普通の女の子”がそれだ。この部分は、「自分には何があるのか?」という悩みに対して卯月が出した答えなのだろう。

 つまりアイドルでもある自分をどう規定したらいいのかという問題だけれど、これに対して「普通の女の子」であるというのがその答えになったということであるはずだ。だから、“制服姿=卯月らしさ(自分らしさ)=普通の女の子”という図式になっているはずで、制服姿でライブに出るというのは、いわばアイドルとしてのキャラクターを「普通の女の子」に置いて見せたということになるし、アイドルとしての自分と素の自分を一致させたんだろうなという話になる。

 という訳で、「卯月ちゃんは普通の女の子としてアイドルをしていくことにしたから制服姿でライブに出ました」というのがひとまずの答えになった。開き直りと言うと身も蓋もないけど、つまりは自己肯定だ。それまで「私には何にもない」と自己否定に陥ってたところからここに行き着くと一気に明るくなって、安心感とかカタルシスが出てくるように思う(多分)。演出の意図としてはこの辺にあるんじゃないだろうか。

 こう考えると、前後の細かい演出にも上手いこと説明が繋がる。この卯月の悩みに対しては、物語の筋として美城常務の姿勢というのも一つの要素になっていたはずだけれど、考えてみるとこの卯月の出した答えは美城常務とは真逆のものだったはずだ。美城常務の姿勢は、作中で何回も出てくるように「アイドルは卓越したスターであるべき」っていうもので、卯月の「普通の女の子なアイドル」っていうのとは180度逆だ。その常務は完全復活した卯月のライブを見て目を瞠り、なんだか悔し紛れな雰囲気で立ち去っていく。この部分は、美城常務が理想としていたアイドル像以外のものを見せられて、その良さを認めてしまったという下りだと読めそうだ。だからこそ、最終話では「平行線すらも飛び越えていくのか云々」のポエム合戦で、しぶしぶ武内Pのやり方を認めるような着地点が導き出されるように思う。

 あとはどうでもいい細かい部分だけれども、プロデューサーが卯月を迎えに行く先が学校であるというのも意味があるように見えてくる。学校の制服っていうのは当然無数の“普通の女の子”が着て過ごしているものである訳で、卯月もその中の一人に過ぎないんだということを示すための場の設定なんじゃないだろうか。ここまで行くと深読み過ぎる気もするけれど、少なくとも家とか駅とかに迎えに行くというシチュエーションよりはずっと積極的な意味が付けられる。

 そんな訳で「島村卯月はなぜ制服でS(mile)ING!したのか?」という答えは「アイドルだけど普通の女の子である自分を肯定したから」ということにしておこう。卯月ちゃん尊い。